FC2ブログ
ヨーロッパ恋愛紀行
恋愛心理学小説
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シェーンブルン宮殿①(ウィーン1日目)
約束の12時ちょうどにホテルのフロントのところに下りていった。小さなホテルだったからロビーも狭い。そんなところであまり待ちたくはなかったのだが、・・・結局そこで30分以上待つことになった。
アリシアはかなりの距離を走ってきたようで、僕と握手してからもまだ息が上がっていた。呼吸が整うまで休んでていいよ、と言ったが、胸に手を当てて苦しそうにしながら、大丈夫よ、と彼女はくり返した。本当に悪いと思ってるみたいだ。フフフ、かわいい。今回の会った女性で初対面に遅刻してきたのは他にもいたけど、誰もアリシアほどまじめに捉えていなかった気がする。もちろん僕はそんな女性に対しては最大限ジェントルに接することにした。
僕たちはロビーのソファに大型のローテーブルをはさんで座っていた。初対面としては快適な距離がとれている。僕は無防備にまだハアハア言っている彼女に、イエス・ノーで答えられる簡単なことをゆっくり聞いていった。そのホテルの周りをよく知ってる?とか、地下鉄に乗ってきた?とか、ランチを食べた?といったことだ。そして12時に待ち合わせしてたのもあり、計画どおりランチを食べに行くことになった。

僕たちはホテルを出て、彼女がもと来た道を地下鉄の駅に向かって歩いた。そこは路面電車が走る広い通りだったが、日曜日の昼下がりというのもあってか閑散としていた。そのため僕は、彼女との間を十分にとってゆっくり歩くことができた。
アリシアは思っていたより小さく見えた。プロフィールでは164センチほどあるはずなのに、年齢のせいか、あるいは短めの柔らかそうなブロンドのせいなのか、今回会った他の女性よりずっと小さく感じた。年齢相応のスレンダー体型で、大きく開いた襟元のうなじから肩にかけたつんとしたラインがとてもセクシーだった。こんなきれいな曲線を見せられると、とても黙っていることはできない。
「写真もかわいかったけど、本物はもっとかわいいよ。会えてよかった。」
照れています、っていうのを顔全体に表すように、かわいい口をちょっとだけ開けたまま下を向いている。でもすぐに顔を上げてこっちを見て言った。
「あなたも、とっても、すてきよ」
慎重にことばを選んだようだった。こんなこと言い慣れてないだろうし、まして英語では口に出したこともないはずだ。普通、男が言うコンプリメントに対して、ほとんどの女はただ照れるか何も反応しないかで、せいぜい言えてお礼くらいだ。それを無理してでも更なるコンプリメントで返すことができる女なんて、僕の長い経験から言ってもそうそういるものじゃない。
アリシアのこの予想以上の反応を見て、僕は彼女に対する態度を決めた。僕だって自分のすべての能力を使って彼女を満足させよう。3日間もあるんだから、彼女にとって忘れなれないほどの素敵な時間にしてあげよう。このとき僕は、かわいい彼女の横顔を見ながらそう決心した。

初対面の緊張した女性をリラックスさせることは男の重要な役割だ。このひとつで、一生のうちで分かりあえる女性の人数が決まってくる。とは言ってもそんなに難しいことではない。原則的には、簡単に答えられる質問を続けることである。そして彼女の解答のひとつひとつに、ちゃんとポジティブな反応をすることである。
「どっから走ってきたの?」
「地下鉄で来たからずっとあっちよ」
僕達が今から向かっている方向だ。でもずいぶん距離があるはずだ。
「かなり遠かったんじゃない?」
「ごめんなさい。ここら辺よくわかんなかったから・・・」
彼女はまだ道に迷ったことを気にしているようだった。
「こんな遠くから走ったんだ。おれだったら諦めて歩くけど」
「そんなことできるわけないでしょ!」 かわいいスマイルを見せて彼女は言った。
「そういえば明日テストなんだよね。準備できてる?」 
「うん!もう大丈夫よ」
「ホントにそうなの?」
「そうよ。あなたのためにしっかり勉強しておいたのよ。だから大丈夫よ、本当に」
先ほどまでの緊張感はほとんど消えて、本来のあるべきかわいい女の子の自然な笑顔になって僕を見上げた。僕は歩調をゆるめずに、彼女と目を合わせたまま横からくっつき、そっと彼女の背中に手を置いた。
「すごくキュートだよ。会えてよかった」
「・・・あなたもキュートよ。そして、あなたに会えてよかったわ」
最高にすてきなスマイルだった。こんなかわいい笑顔を最後に見たのはいつのことだったろう?美しいスマイルを向けられると僕はいつもこう思う。僕が今まで信じてきたことは正しかったんだ、と。その美しさは僕のすべてを正当化し、そしてようやくそこにたどりついた僕を祝福しているような感覚にさせる。
これが一目ぼれ1st degreeの心理である。

何件かあてにしていたレストランは日曜日ということで閉まっていた。暗くなった店内をのぞくごとにアリシアはがっかりした表情を見せた。
「ここはどんなレストランなの?」 ドアの中を見ながら僕は聞いた。
「よくわかんないけど、普通のよ」
「まあ何でもいいさ」 僕はひとりで楽しそうに言った。「まだ初日だしね」
どこまで歩いても人通りは少なかった。当然のようにレストランも閉まっているところが多い。僕としては空いているレストランならどこでも良かったが、僕をガイドするように頼んでしまった以上、彼女が選ぶのを待つしかなかった。
何件か後にようやくちゃんとしたレストランを見つけてそこに入った。そこは6人は掛けられそうな大型のテーブルが並んだ居酒屋のような内装だった。閑散とした外の通りと対照的に店内は満席近い様子だったが、なぜか客は老人ばかりだった。僕達が入っていくとめずらしそうにじっと眺めてきた。
元気のよさそうなおばさんウェイトレスがやってきて、テーブルに座ったアリシアと僕を交互に見ながらドイツ語で何やら説明し、最後にドサッとメニューを置いていった。
さてようやくゆっくり話ができると思ったが、どうやらそこは会ったばかりの僕たちにはあまり適した場所とは言えないようだった。なぜなら店内は異常なほど静かだったからだ。老人客たちはまるで午後のたっぷり残された時間のために話題を節約しているように、とても静かに食事をしていた。音楽は何もかかってない。巨大なテーブルをはさんで座った僕たちの会話はレストラン全体に響きそうだった。
ウィーンでは結構ひとの顔をじろじろ見てくる。特に僕が現地の女の子と一緒だからかどうかわからないが、そのレストランをほぼ満席に埋め尽くした暇そうな年金生活者たちは、僕たちのテーブルに視線を集中させているようだった。決して悪意のある視線ではない。普段なら気にしないところだが、緊張すべき初対面の様子を聴衆に見せるというのは妙な気分だった。しかし同時に、まわりが僕たちの関係をどのように見ているのかに興味もあった。暇にまかせて色々な想像をしてるだろうが、まさかインターネットで知り合って外国からはるばるやって来たばっかりだなんて誰も思わないだろう。僕たちはみんなの想像を越えてるんだ。そう思うと、ちょっと残念な気がしてきた。僕がここで立ち上がって、みんなに演説すべきかもしれない。
『レィディース・アンド・ジェントルメン。あなた方は今日とてもラッキーです。なぜなら僕はインターネットで知り合って、はるばる遠くの国からやってきたのです。そしてほんの今、出会ったばかりです。これからどんなことが待ち受けているのでしょうか?上手く関係を築けるでしょうか?みなさん、僕たちの今後を期待していてください。祈っていてください。僕は絶対に成功させてみます。この美しい女性ときっとうまくいってみせます。だから皆さま、僕たちに盛大な拍手をお願いします!』
ぱちぱちぱちぱち、ブラヴォー!

しかしよく考えてみると、そこにいた老人客たちに英語がわかるわけなかった。ならば何も気にすることないのだ。そんな僕の考えがわかったのかわかってないのか、アリシアはメニューを見ながら楽しそうに話しかけてきた。
「ねえねえ、どんなもの食べたい?」
メニューはドイツ語のみだった。僕はメニューにあったさかなの絵を見て「さかなが食べたい」と言ってしまってから失敗に気づいた。食べ物について英語で説明するのは簡単じゃないし、特にさかなの種類なんて彼女にわかるはずなかった。ここは彼女にうまく説明させて得意がらせるべき場面だったのに・・・。しょうがないから僕は彼女が英語で説明できそうなこと、つまり、さかなの種類ではなく調理の方法について訊いた。それでようやくフライかグリルかという選択ができたのでフライにしてくれるように彼女にたのんだ。彼女はなんとか僕の料理を選び、そして自分も同じものを注文した。
出てきた魚を見たとき僕はギョっとした。プレートの上にはただフライにしただけの巨大な魚が4匹も乗ってきた。どう見てもそれはただのコロモだった。食べてみたがまったくそのとおりで味がない。僕はそっと彼女の方を見た。これをおいしいと言って食べたらどうしようかと心配したが、幸い彼女は、味がない、と言って塩をふりかけてた。僕もそれにならったけど、結局のところいくら塩だけをかけたっておいしくなるはずはなかった。サイドディッシュの冷たいポテトも見た目同様に全然だめだった。まあ初対面では味などかえって悪い方が話がすすんで良いだろうと思い、なるべく気にしないで食べた。
その初対面の席でアリシアからは緊張感を感じたが、それ以上に僕に対する親近感を強く感じた。かなり頻繁にメールのやりとりを続けていたというのもあり、僕たちはお互いのことをよく知っていたからであろう。ある欧米の心理学者の研究でも明らかにされたが、インターネットで知り合うカップルはお互いの情報を事前にしっかり把握しているから発展することが多い。これはまさに個性の強い欧米的な結果であると思うが、最初にお互いの個人的考え方をしっかり理解することはとても重要なことなのだ。もちろんメールで深い内容を話し合っていたわけじゃないけど、メール交換を多くしたという意味ですでにある程度進んだ関係だったのだ。いちおう初対面らしく振る舞いながらも、ときどきこそっと見せるイノセントな笑顔を見ていてそう思わざるえなかった。
スポンサーサイト

テーマ:国際恋愛 - ジャンル:恋愛

シェーンブルン宮殿②(ウィーン1日目)
この記事はブロとものみ閲覧できます





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。