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ヨーロッパ恋愛紀行
恋愛心理学小説
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ブダペスト王宮とアンドレア①
朝起きてまずアンドレアに電話した。今日はブダペストに来るはずだが、何時にどこで会うのか全然決まっていなかったのだ。
「今、そっちに向かってる途中よ」 彼女は当然でしょ、という口調で答えた。
僕よりずっと朝早くから行動していたらしい。
「電車の中なんだ?」
「バスよ」
「じゃ何時に着く?ホテルに来てくれるの?」
「わかった。ホテルに行くわ。10時頃かしら?・・・やっぱり11時かも」
かなり大ざっぱである。しかしここは彼女の言うことを聞くしかない。
「わかった。ホテルは10時にチェックアウトしなきゃならないから、10時過ぎたら1階のカフェにいるからね」
これは早く来いって意味だが、彼女はわかってくれただろうか?
しかし結局、彼女が来たのは11時過ぎだった。
それまで僕はレセプションの横にあるカフェでひとりで待っていた。となりのテーブルではそこのホテルのオーナーらしい男とアメリカ人ビジネスマンが商談していた。ホテルオーナーの英語はたどたどしく、となりで聞いているだけで気になってしょうがなかった。それにしても世界のどこ行ったって英語が通用するからアメリカ人は楽なものだ。まあ僕も英語のおかげで世界各地の素敵な女性と巡り会えることができるのだが。
僕はひとりでテーブルについたまま、これから会うアンドレアとのそれまでのやりとりについて思い出していた。
歴史的に興味のあったハンガリーをどうしても今回の予定に入れようと思い、多くのハンガリー女性をチェックした。その中でちょっと変わった雰囲気のアンドレアを見つけたのだった。24歳白人の大学院生。専門は視覚系情報科学。僕と同様、マッチ系サイト自体に興味を持っているということだった。写真は載せてなかったが、頼んだらすぐに送ってくれた。写真は特にかわいいということもなかったが、ノリは悪くない。彼女とは3日間の予定を入れた。それだけあればかなり親しくなれる自信があった。

budapest_tram
ブダペスト中心近いトラムの駅


アンドレアをひたすら待ち続け、ついにランチを注文してしまった直後にやっと彼女が現れた。彼女はバスのなかで食べてきたからいらないと言うので、僕ひとりが食事をするという、あまり理想的とはいえない初対面になってしまった。
最初レストランに入ってきた女性がアンドレアなのか全然わからなかった。写真とは全然イメージが違っていたからだった。もちろん本物の方がずっときれいだった。わざと変な写真を送ってきたのではないかと思える程だった。写真だけで判断するような男かどうか確かめるために。でも彼女がそんなことをするだろうか。そう思いながらもう一度彼女を見てみた。赤茶のまっすぐなロングヘアにまじめそうなメガネがとても良く似合っている。
僕の前に座ったアンドレアは電話やメールのときと同じようにおとなしかった。自分からは積極的にしゃべるようなタイプではないらしい。まじめそうな視線を感じながら無言でランチを食べるというのはなかなか辛いものがある。だから僕は自分ひとりでランチを食べながら、自分の方から話し続けなければならなかった。この状況はどう見ても彼女が心理的に優位に立っている。僕は初めて食べるハンガリー料理をナイフで切り崩す作業をしながら初対面会話をリードしなければならなかったからだ。彼女はそれを見ているだけでよい。しかしアンドレアが本当におとなしくナイーブは女性だったら、僕がこれくらいの心理的ハンディを負った方が良いはずだった。何といっても最初にやらなければならないことは彼女の緊張感をなくすくことだからだ。自分の気持ちに構っている余裕などない。
「ここはすぐにわかった?」 まず遅くなった言い訳を聞いてあげようと思った。
「ここ、来たことなかったから・・・」 申し訳なさそうに彼女は言った。
どうやら思った以上に遅くなったことを気にしてるみたいだった。じゃまずそれを忘れさせてあげよう。
「遠いよね。昨日の夜、ブダペストの駅からここまで1時間以上かかったよ」 僕は昨晩のことに頭がいっぱいになってしまったふりをして言った。
「昨日はあの二人とさんざん迷って歩き回ったんだよ。聞いてるよね?」
「ううん、聞いてない」
「じゃあの後、二人とは連絡とってないんだ?」
ちょっとびっくりだった。いきなり男2人をブダペストの駅に行かせ、日本人の男をピックアップしホテルにチェックインするように頼んでおいて、それがどうなったか確認もしてなかったのだ。
アンドレアは相変わらずまじめそうな表情で、僕のプレートのランチがだんだん減っていくのを眺めていた。僕はランチに集中しているふりをしたまま、彼女の意図を読みとろうと思い、ときどき彼女のかわいい口もとやほっそりした指を注意深く見た。
「そういえば」 彼女はバッグから紙の束を取り出した。「ブダペストでどこに行きたいか決まってる?」
ツアーのパンフレットだった。それに僕のためにバス・地下鉄の一日券も買ってきてくれていた。それで余計に時間がかかったみたいだった。パンフレットは僕もいくつか持っていたけど、もちろんそんなもの出さずに彼女の用意してくれたものを広げて一緒に見た。
ブダペストはプラハと違って市内に観光スポットが点在している。王宮・国会・・それに温泉が有名だ。僕たちはその日の夜には彼女のすんでいる街、ヴェスプレムに行かなきゃならなかったから、とにかく王宮だけにでも行ってみることにした。
バスと地下鉄とトラムを乗り継いでドナウ川の対岸にある王宮にたどり着いた。プラハ城ほどは混んでなかったがさすがにブダペスト最大の観光スポットだけあって人は多い。
その王宮に行くまでの間、アンドレアは依然として初対面モードのままだった。バスや地下鉄ではとてもいい雰囲気になれそうになかった。彼女とうち解けるにはまだまだ時間がかかりそうだった。彼女のようなおとなしい性格の女性はメールで連絡とるには楽だが、実際に会って話すとなるとずっと大変なのだ。それに彼女はソニアやイリーナほど英語が得意じゃないみたいだから、僕はなるべくゆっくりクリアーに話そうとしたため、ますます口説くどころじゃなかった。
王宮の高台からはドナウ川を挟んでブダペスト市内がきれいに見下ろせた。しばらくぼーと眺めていたい程の景色だったが、彼女にとって特別なものではないらしく、風で乱れた自分の髪ばかりに気を取られているようだった。これでは困る。僕のペースになりそうにない。僕ひとりだけで雰囲気に酔っていてはどうしようもないのだ。ちょっと考えなければならなかった。


続く・・・


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ブダペスト王宮とアンドレア②
アンドレアは大学院生だ。それもサイエンス系のドクターコース。ということは、普通の女性の、いわゆる女の子らしい感覚というものをあまり期待しないほうがいいかもしれない。芸術を見て感動するとか雰囲気に酔うといったことは、本人としてあまり重要ではないかもしれない。理系のインテリで常に合理性を意識して生きているのであれば、こっちもそのノリで接近すべきなのだ。僕だってそれくらいのことはできる。なぜなら彼女と同じサイエンス系の人間なのだ。
「遠くの景色が青っぽく見えるのはどうして?」
高台から街を見下ろしながら、僕は突然思いついたように言った。確かに遠くの景色は一様に薄青く見える。
「えっ、それは・・・」 ちょっと驚いた様子だった。アンドレアの専門は色覚情報処理で、それまでに何度もメールで話題に出ていたのだった。
彼女は王宮の城壁の下に広がる街や遠くの山々を見回している。そんな無防備な横顔を見せたのは初めてだった。「曇っていて太陽光が薄まってるからかしら・・・。あなた知ってる?」
「空気中のダストによって光の拡散が起こるから波長が平均化されて彩度が落ちる。それでも波長の比較的短い青系は拡散の影響が少ないから遠くへ行けば行くほど青っぽく見える」 僕は彼女の正面に向き直って続けた。「Cognitively speaking, ...................(心理学的に言うと、きみがあまりにも綺麗だから周りのものは色がくすんで見えるのさ)」 僕は彼女がよく使うはずの専門用語をたくさん使って言った。
メガネの奥のまじめそうなブラウン色をした眼が初めて笑った。王宮の白い城壁の前で彼女のブラウンの瞳とブラウンの髪がハンガリーの黄色い太陽に照らされてキラキラしていた。こんなにメガネがよく似合う女の子もなかなかいないだろう。

andrea_castle
アンドレアと王宮にて


僕たちはもと来たようにトラムに乗ってブダペスト中心街に向かった。窓からは傾いた秋の太陽が差し込んでいた。
「今夜はどうするの?もう一泊ブダペストに泊まる?それともヴェスプレムに行く?ここよりずっといいわよ」
この先の二泊分の予定が決まってなかったが、最初の予定通りすべてアンドレアに任せてしまうのが良いと思った。
「うん、そうしよう」
「じゃホテルとってあげる」
彼女はそう言って、すでに取り出していた携帯でメールを打ち始めた。

ブダペスト中心にあるヴァーチ通りは、ハンガリーいちばんの繁華街であり観光スポットでもある。メジャーな観光地のどこにでもあるようなヨーロッパブランドのブティックが並んでいた。ハンガリー人のアンドレアにとって見ればここは楽しいショッピング街であるはずだ。少し女の子っぽさを見せるようになった彼女は楽しそうにウィンドウショッピングをしていた。
「ブダペストに来ると必ずここに来るのよ」 彼女はそう言って靴屋をのぞき込んだ。「ここ見ても良い?」
「もちろんさ」
僕たちは一緒にそのヨーロッパブランドのシューズショップに入った。EUのブランドと言ってもハンガリーだけあって値段は押さえてある。同じものを西側諸国で買うとずっと高いはずだ。しかしそれでもアンドレアたちにとっては十分高く感じるに違いなかった。チェコ同様、ハンガリーは旧ソ連共産党に解放されてからさほど経ってない。平均的な月収は4~5万円ということらしい。これではいくら安くなっているとはいえ、ここで売られているものはかなりの高額になってしまう。すべてのものが地元の人には高く、観光客には安いのが東欧の観光地の宿命であるようだ。
だからハンガリー最大のショッピングストリートは事実上、観光客商売だった。同じものでもフランス・イタリアで買うより安いからもちろん観光客は買いあさる。でも地元のハンガリー人たちはこれをどう思って見ているだろう。自分の国で売っていながら、自分たちは買えない。西側にあこがれて日本のようにひたすら唯物主義に走るのか、それとも自分たちの生活と文化を守ろうとするのだろうか。
アンチ・経済グローバリズムのデモはヨーロッパ各地で見られる。彼らにとって宿敵はアメリカの巨大資本だ。マクドナルドやスターバックスが嫌いと言っていたプラハのソニアの気持ちもよくわかる。しかし誰が見てもこの流れは止めようがない。先に乗ったものが得するようにできている。そんな流れのなかで、このようなヨーロッパの小国はこの先どうなっていくのだろう。
そういえばプラハで会った米国人のピーターはこんなこと言っていた。 「世界のどの都市も同じように見えるようになったらつまらないよな」
アンドレアが携帯を持って戻ってきた。
「ホテル取れたって。行きましょ」

続く・・・


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ブダペスト王宮とアンドレア③
中心街の一角にあるバスターミナルから、アンドレアの住んでいるヴェスプレムにバスで向かった。ヨーロッパではどこでもよく見かける2階建ての長距離バスだった。彼女は真っ先に2階の最前列を取ってくれた。足下から天井までフロントグラスになった特等席だ。快適な3時間のバス旅行になりそうだった。
駅で彼女が買ってくれたパンを一緒に食べながら、窓から夕暮れどきのブダペストを無言で見ていた。オレンジ色の街灯が灯りはじめた街並はなぜかとても懐かしい気持ちにさせる。
「きれいな街だね」 僕は窓の外に広がるアンドレアの国を純粋に賞賛した。「でも僕がもう一度この景色を見ることがあるだろうか?」
「ないわよ、きっと」 彼女はあっさりと言ってちょっとだけ笑った。まだまだガードは高い。
乗客に観光客らしき人は皆無だった。アンドレアと同じ大学生のようなのがほとんどだ。もちろん全員白人で東洋人は僕だけだった。ハンガリーでは東洋人に対する視線はプラハと似ている。視界の縁で捉えながらも決して視線をそっちに向けない。東洋人の比率としてはフランスやスペインの田舎と同じようなものだが、彼らのようにじろじろ見てきたりはしない。ハンガリー人は礼儀正しいのだ。

budapest_town
王宮からドナウを隔てた街の中心方面を見下ろす


ヴェスプレムに着いた頃はすっかり暗くなっていた。ここは地方のこじんまりしたカトリックタウンで、街の中心にはおきまりの背の高い教会がひっそりと建っていた。それ以外に高い建物はほとんどない。
荷物もあったし、まずはホテルにチェックインすることになった。例によって彼女の友達が(たぶんまた男だろう)さっき携帯メールで頼んだ通りに、ちゃんとホテルを取ってくれているはずだ。
着いたところは洒落た造りのペンションで、その教会タウンにとてもよくマッチしていた。ポルトガルのビーチにある高級リゾートホテルみたいだったが、値段はポルトガルの半分もしなかった。あまりにも気に入ったので彼女に2泊分取ってくれるようにたのんだ。なにしろフロントのおやじさんはマジャール語とドイツ語しか話さなかったから僕は予約の延長さえひとりではできなかったのだ。
部屋は広くきれいで、シングルベッドを2つくっつけたドイツ式のベッドだった。大きな窓からは南欧風の中庭が見渡せた。
ディナーはその部屋で食べようと僕が提案し、なんとか彼女を説得してルームサービスを頼んでもらった(英語が通じないから僕は電話できない)。ハンガリーらしくパプリカのたっぷりかかったディナーを、部屋にあった小さなテーブルに乗せて二人で食べた。
ホテルの部屋に二人でいると独特な親密感がわいてくる。周りに誰もいないしすぐ横にはベッドがある。窓からはオレンジ色にライトアップされた中庭が少し見えるだけだ。
そんな中で食事をしているアンドレアの姿はとても自然に見えた。女の子とホテルに泊まった朝のような幾分気怠くまったりとした雰囲気だった。
さて、そろそろ食べ終わる。そしたらコーヒーだろうか。それともコーヒーのことなんて気にもしないだろうか。僕はまだハンガリー人の食後の習慣に関してまったく未経験だった。こういうときはとりあえず相手の出かたを見るしかない。
僕はほとんど食べ終わっている彼女の方を見た。上着はさっき脱いでベッドに投げてある。今は薄いシャツ1枚だけになっていた。白人にはめずらしいほどの幅の細いボディをその小さめのシャツがきれいに形どっている。そういえばプロフィールで彼女はスレンダーになっていたことを思い出した。白人の場合スレンダーの基準がかなり大ざっぱで、とてもその範疇に入らないだろうと思われる女がスレンダーになっていることも少なくない。でもアンドレアの場合は誰が見たってスレンダーだった。slenderというのは、thinとは違う。ただやせているのではなく、そこには女性特有の美しさがなければならない。彼女のその細い体がつくるラインは、純度の高い女性ホルモンを濃縮してつくられたような女らしさを身体のあちこちに見せていた。せまいホテルの部屋の中で見ると、女としての存在感を十分すぎるほど感じてしまう。
「じゃありがと」 食事が終わるとアンドレアは急に立ち上がり、当然のことのようにベッドの上の上着を着た。「じゃ明日はお昼くらいに来るわ。それでよい?」
「あ、ああ。もちろんいいよ」
「じゃおやすみ」 彼女はめずらしくちょっとだけ僕に目を合わせたままスマイルした。
「じゃまた明日」
しょうがないから僕はドアのところまで行き、まず彼女のためにドアを半分だけ開き、そして彼女の額におやすみのキスをした。
これが僕にできるすべてだった。彼女は一瞬立ち止まり僕の目をちらっと見たが、キスに関して何も表情を変えずに、ドアを出て行ってしまった。
まだあと1泊残っているのだ。そう思いながら、さっき二人で食べたハンガリー料理の匂いとアンドレアの残り香のなかで悶々としながら寝た。

ブダペスト2日目おわり

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